写真)大阪で実証実験中のCO₂を食べる自販機
出典)アサヒ飲料100 YEARS GIFT
- まとめ
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- 大気中のCO₂を吸収する自販機が開発された。
- 吸収したCO₂は肥料やコンクリートなどの工業製品に利用。
- CO₂吸収能力の高い素材開発も進め、将来的にはカーボンニュートラルな自販機の開発を目指す。
自販機大国、日本
お茶、水、ジュース、スポーツドリンク、スープに至るまで、ボタンひとつですぐ飲み物を買うことができる自動販売機(以下、自販機)。街中では至る所に設置され、毎日複数回利用する人も少なくない。
経済産業省の統計によると、日本では2021年末の時点で270万台が設置されており、そのうち飲料用が8割以上を占めている。これはコンビニエンスストア店舗数の約50倍の規模だ。駅のホームや、繁華街だけでなく、普通の街角にもある自販機は、日本人にとってはおなじみだが、訪日外国人旅行客にとっては、ふしぎな光景らしい。「なんで盗難にあわないんだ?」という疑問がわくという。
出典))経済産業省「これも自動販売機で、進化する販売サービスに注目」
私たちにとってこんなに便利な自販機だが、かつて悪者にされたこともある。2011年4月のこと。東日本大震災直後、節電が求められる中、石原慎太郎元都知事は会見で、「自動販売機がこんなに林立している国なんて世界にない。そういう業務でべらぼうな電力を食っているということは、浪費でしかない。店舗に行って買えばいいんです」と述べ、自販機が大量の電力を消費している、と批判した。
こうした声を受けて、多くの飲料メーカーが節電対策を強化。例えば日本コカ・コーラ株式会社とボトラー社や関連会社などで構成されている、「コカ・コーラシステム」は、冷却運転の時間帯を電力使用がピークとなる日中から、電力供給に比較的余裕のある夜間へとずらす「ピークシフト自販機」を開発、2013年1月から全国展開を始めた。7時から23時までの最長16時間、冷却用電力を「ゼロ」にすることで、日中の消費電力を最大95%削減している。
「ピークシフト」は運用上の取り組みだが、それ以前から自販機メーカーは省エネ技術を磨いてきた。例えば、冷蔵庫のように庫内全部を冷やすのではなく、部分的にもうすぐ売れていく商品だけを冷やすことで消費電力量を減らす機能「ゾーンクーリング」や、「照明の自動点滅・滅光」、庫内の冷却装置から出る熱を再利用し、ホット商品を温めている「ヒートポンプ」などを組み合わせ、着実に消費電力を削減してきた実績がある。
注:数値は、省エネ法に基づき算出される自販機の1台あたりの消費電力量の加重平均値。
出典)日本自動販売システム機械工業会
「CO₂を食べる自販機」、登場
こうして年々電力消費量を減らしてきた自販機だが、あらたな課題が浮上した。それがCO₂削減だ。
日本は2050年カーボンニュートラルの達成を目指し、あらゆる分野においてCO₂排出量の削減に取り組んでいる。自販機は、電力消費量が減ったとは言っても、稼働時の電力使用によりCO₂を排出している。自販機1台あたりのCO2排出量は年間消費電力量の削減に伴い年々減少しているものの、まだ年間約300kgとの試算もあり、CO₂削減への取り組みを求められている。
提供)アサヒ飲料
こうした時代の要請を受け、大手飲料水メーカーであるアサヒ飲料株式会社が「CO₂を食べる自動販売機」を開発、6月から実証実験を開始した。
「食べる」という表現が面白いと話題になったが、正確には、「大気中のCO₂を吸収する」自販機だ。
「大気中のCO₂を吸収する」と聞くと、「そんなことできるの?」と思う人がいるかもしれないが、以前、別の記事で紹介(「CO₂を大気中から回収!?驚きの新技術」2021.06.15)したように、ダイレクト・エア・キャプチャー(Direct Air Capture、以下DAC)という、空気中から直接CO₂を回収する技術がすでに確立されている。
この自販機は、庫内に搭載した特殊材(編集部注:材料は非公開)が大気中のCO₂のみを吸収する仕組みだ。1台あたりのCO₂吸収量は稼働電力由来のCO₂排出量の最大20%を見込んでおり、これはスギ(林齢56-60年)約20本分の年間CO₂吸収量に相当するとしている。
これまでも多くの企業が大気中のCO₂削減のために、植林活動をしてきたが、今回のCO₂を吸収する自販機は木と同じ役割を果たすことになるため、脱炭素社会の実現に貢献するとアサヒ飲料は考えている。
吸収したCO₂は、取り出して肥料やコンクリートなどの工業原料にすることを計画している。
現在、実証実験では関東・関西エリアを中心に、CO₂濃度が高い屋内・屋外などに約30台を設置、CO₂を吸収する量やスピードなどを検証。本格展開は2024年を予定している。また、CO₂吸収能力の高い素材開発も進め、将来的にはカーボンニュートラルな自販機の開発を目指す。
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