写真) 平岡ダム
出典) 中部電力株式会社
- まとめ
-
- 純国産自然エネルギーでCO2排出量が少ない水力発電。
- 水力発電事業への理解を目的に作成された「ダムカード」。
- ダムマニアや収集家の間で人気を博している。
水力発電の役割
水力発電というと思い浮かべるのはダムだろう。私事で恐縮だが、筆者の父親は某電力会社でダムを作る土木建築技師だった。小学生の頃、ダムの建設現場に連れて行ってもらい、そのスケールの大きさに度肝を抜かれたのを今でもはっきり覚えている。まだ日本に原子力発電所がない時代のことだ。
さて、みなさんは水力発電が日本の発電量の中でどのくらいの規模なのかご存知だろうか?大規模な水力発電所は、1960年代にほぼ開発が終わっている。発電電力量はほぼ一定で、2016年度の水力の発電電力量(揚水発電を含む)は976億kWh、全体の約7.6%を占めている。依然、日本にとって重要な電源であることには変わりはない。
出典) 資源エネルギー庁
そして忘れてはならないのは、水力発電は、CO2排出量が非常に少ないクリーンなエネルギーだということ。また、資源の少ない日本の貴重な純国産自然エネルギーであり、再生可能エネルギーの一つだということだ。
出典) 資源エネルギー庁
ダムとは
一般的には、水をせき止める本体の高さが15m以上あるものが「ダム」と呼ばれている
出典) 国土交通省 ダムコレクション
水力発電のみならず、水害を防ぐための洪水調節 、流水の正常な機能の維持、農業・上水道・工業のための貯水、発電、ダムによって役割や目的は様々だ。
また、1つのダムに複数の目的を持たせたダムを「多目的ダム」 と呼んでおり、上記の目的を全て網羅したダムに奈良俣(ならまた)ダムがある。
出典) 国土交通省 ダムコレクション
ダムの形も様々だ。求められる役割や大きさ、つくる場所の地形や地盤の強さなどによって、いくつかの型式に分けられる。
出典) 国土交通省
ダムカード登場
日本の電力需要に大切な役割を果たしている水力発電だが、最近では火力発電や太陽光発電、風力発電などに押されて、その存在は霞みがちだ。そこで、国土交通省と独立行政法人水資源機構が立ち上がった。ダムへの理解、水力発電事業への理解を深めることを目的に「ダムカード」を作成したのだ。
このカードは、国土交通省と水資源機構の管理するダムのほか、一部の都道府県や発電事業者の管理するダムで作成され、ダムの管理事務所やその周辺施設で配布されている。
ダムカードの生い立ち
その歴史は意外と浅く、配布は2007(平成19)年からだ。もともとダムファンやダムマニアと呼ばれる人たちは2000年代初頭からいたようで、彼らの意見やアイデアを積極的に取り入れ、収集家の立場に立って制作したことで、ますますダムの人気が高まっていった。
そうした中、「ダムナイト」や「ダムマニア展」などのダムマニアが集うイベントが頻繁に行われるようになった。日本ダム協会は、ダムの役割や魅力を広く知ってもらうため、ダムマニアやダム技術者らを「ダムマイスター」に任命する制度を2010年に設け、2013年からはその年に活躍したダムをダムマニアたちが選定し表彰する「日本ダムアワード」も開催されている。
さて、話を「ダムカード」に戻そう。
国内111か所のダムを対象に配布が始まったこの「ダムカード」、現地に行かないと手に入れられないレア感が好評で、ダムマニアや収集家らの人気を集めている。2018年10月には、ダムカード配布場所は全国で673か所にも及ぶ。
出典) 国土交通省HP
カードの大きさや掲載する情報項目などは、全国で統一されており、表面はダムの写真と「ダムの目的」、「ダムの型式」が記号で記載されている。
(表面記載情報)
ダムの目的記号
- ● F : 洪水調節、農地防災 (Flood Control)
- ● N : 不特定用水、河川維持用水 (Normal Function of the River Water)
- ● A : かんがい用水 (Agriculture)
- ● W : 上水道用水 (Water Supply)
- ● I : 工業用水 (lndustrial Water)
- ● P : 発電 (Power Generation)
- ● S : 消流雪用水 (Snow melting)
- ● R : レクリエーション (Recreation)
ダムの型式記号
- ● A : アーチダム
- ● E : アースダム
- ● G : 重力式コンクリートダム
- ● GA : 重力式アーチダム
- ● GF : 重力式コンクリート・フィル複合ダム
- ● HG : 中空重力式コンクリートダム
- ● MB : 可動堰
- ● R : ロックフィルダム
裏面にはダムの型式や貯水池の容量・ダムを建設したときの技術といった基本的なデータを始め、施設のこだわり技術についての「こだわり情報」、施設もしくは施設周辺について掲載する「ランダム情報」など、様々な情報を凝縮して掲載している。
(裏面記載情報)
ダムのデータ
- ● 所在地
- ● 河川名
- ● ダムの型式
- ● ゲート
- ● 堤高
- ● 堤頂長
- ● 総貯水容量
- ● 管理者
- ● 本体着工/完了年
- QRコード対応サイトHP(無い場合はHPアドレス)
- ランダム情報(ダムやダム周辺の観光情報など)
- こだわり技術(ダムに使われた技術的特徴)
今年1月には、中部電力が新たに平岡ダム「ダムカード」を制作し、2月1日から配布を開始。長野県下伊那郡天龍村にある平岡ダムを訪れた人を対象に配られるこのカードは、同村平岡の観光施設「ふれあいステーション龍泉閣」で無料配布されている。中部電力が同県内のダムをカードにするのは初めてとのことだ。
出典) 中部電力
ダムはわれわれの生活に欠かすことはできない。しかしダムの果たしている役割が社会に浸透しているとは言えない。ダムマニアの方々だけでなく、私たちもダムの効果を知ることが大切だ。今年2月24日から5月31日まで、「天皇陛下御在位三十年 記念ダムカード」が、国土交通省と水資源機構が管理する全国のダムで1か所につき1種類、発行されている。これを機に、休日にでも近くのダムに行き、「ダムカード」をもらってきてはどうだろうか?大自然にたたずむ巨大建造物を目の前にして、家族や友人とダムについて語り合うのも一興だろう。
Recommend Article / おすすめ記事
RANKING / ランキング
SERIES / 連載
- エネルギーと環境
- エネルギーと環境は切っても切れない関係。持続可能な環境を実現するために、私達は「どのようなエネルギー」を「どのように使っていくべき」なのか、多面的に考える。